人気の店は、せっかく来た客を満席で断ることもある。例えば100席のオオバコの『大吉』というのもあっていいと思うけれど、全国約800店、すべて20席程度の小バコばかりなのはなぜなのか。
「確かに外食の世界では、席数をいかに増やすかを考えることが多いのですが、大吉の場合は、10坪20席が基本です」
「店主の目が行き届かない大きすぎる物件は、例えば18坪の店は、8坪分倉庫にしてしまうんですよ」
「人を雇えば人件費が掛かる。夫婦二人でやれるからこそ、商売が成り立つんです。それを知り尽くしているからこその10坪20席なんですよ」
「そして小さい店だから、店主には全体が見えます。反対にいえば、お客さまからも焼き台が見えます。“カウンターの内側は舞台。主役は店主”。だから店主はみんな張り切って舞台に立つんですよ」
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「東北の震災の時、タレを失った店のために、たくさんの店から少しずつタレが集まったんですよ。『うちの大事なタレ、使ってもらえるなら』って」。
そうして、東北に大吉は同じ味で復活したという。
個人の店ではできない、仲間の居る強みだろう。
調理師学校を出て、数年数十年の修業時代を経て、“おやっさん”に祝福されて独立して店を構えた料理人や店主をたくさん見てきたけれど、こんなに大勢の仲間や先輩がいるというのは、通常、個店ではなかなかない。
『大吉』は、小さなオーナーシェフの店が、大きな“大吉丸”という船に乗りあっているようなものなのだ。大波が来ても、小舟なら流されるが大船ならみんなで乗り切れる。
小さい個人店の良さと、大きなチェーン店の強みを両方兼ね備えているとは、つくづくよく考え尽くされたシステムだと思う。
37年間、延べ3000店を展開してきたノウハウは、まだまだありそうだ。
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