やきとり大吉の旨さの秘密に迫る!

3ヶ月の研修

もう1つ、私が一番不思議に思っていることについて訊ねた。
リストラの嵐が吹き荒れると、脱サラ組の焼き鳥店が続々開店するという現象が起きる。そして、たちまちのうちに閉店していることが多い。「鶏を焼くだけなら何とかできるのでは」という発想で始めるものの、そう簡単ではなかったという構図だ。それが、何故に料理人だったり、経営者だったりしたわけでもない人が、「大吉」では成功するのか。
「3ヶ月の研修があります」というのが答えだ。けれど、未経験者がたった3ヶ月の研修で、店主、そして経営者になれるのか。

「鍋洗いから始まって、飯炊き何年とか。老舗の和食屋さんなどだと、厳しい修業が何年も続いたりしますよね。でも、焼き鳥に見事な包丁さばきは必要ないです。とはいえ、例えば人気の焼き鳥店に修業に入っても、まずは洗い場、ようやく仕込み、串打ち。焼き台に立つまでには数年?それも見て覚えろなんてこともあります。でも、『大吉』の場合は、現役の人気店の店主が、現場で、惜しげもなくすべてのノウハウを教えてくれるんです。そのノウハウは、奇をてらったことではなくて、聞けばなるほどと思うようなことが多いですが、聞かなければ気づけない。それも必要な時に必要なタイミングで教わるから、短期間で身につくんですね」。

「現在約800店舗が稼働していますが、すでに引退した店や、閉店した店も含めれば、創業37年の間に、延べ相当な店舗を立ち上げてきています。失敗から学んだことも多いですし、こうすれば成功するという経験則も数多くある。ちょっとした工夫とか、経験の中から搾り取ったエッセンスが凝縮した集大成を伝えるのなら3ヶ月でできるというわけです」。

「研修店は、本部が店主の人柄、経営状態などをチェックして選抜しています。25年間教え続けてくれている店主もいますよ」。
 1ヶ月ずつ3つの店で研修を終えると、鶏のさばき方、串の打ち方、焼き方、接客、そして、店主としての心構えまで、一通り学んだ、ひとりの大吉店主が誕生するらしい。
 そして、そのとき、新店主の手の中には3つの店のタレがあるのだとか。

※画像はイメージです

タレ

「1ヶ月の研修の間、毎日営業後に、「いただきます」と、少量ずつタレを分けてもらうんです。1軒から5合分くらいだけ」。
毎日ちょっとずつって、面倒ですね。
「急に大量に分けてしまうと、店のタレの味が変わってしまいかねませんから」。
3ヶ月3軒の店から集めたタレに、新しいタレを併せたものが、自分の店の味になるのだ。

研修店のタレもそうしていただいてきたものがベースになっている。さかのぼれば、すべての『大吉』のタレは、繋がっているというわけか。だから、全国どこの店も、大吉らしい味がする。

※記載内容は取材当時の情報を元に作成しております

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